初めての転職 企業選びの勘所
初めての転職は、多くの方が期待と同時に大きな不安を感じるものです。特に企業選びは、自身のキャリアや働く環境を決定する重要なプロセスであり、「どのような基準で選べば良いのか分からない」「自分に合う企業を見つけられるか不安」といった悩みを抱えやすい段階です。
この段階での不安を乗り越え、納得のいく転職を実現するためには、やみくもに情報を集めるのではなく、明確な視点を持って企業と向き合うことが肝要です。特にWebデザイナーという職種においては、デザインや開発の文化、チーム体制、使用するツールなども企業によって大きく異なるため、自身のスキルや志向性に合った環境を見つけることが、その後の活躍に繋がります。
本稿では、初めての転職活動における企業選びについて、不安を軽減し、ポジティブに進めるための具体的なステップと、Webデザイナーならではの視点を含めた「勘所」をご紹介します。
企業選びを始める前に必要な準備
具体的な企業を探し始める前に、まずは自分自身の内面と向き合う時間を設けることが大切です。これは「自己分析」と「キャリアの棚卸し」を含みます。
自己分析では、これまでの職務経験を通じて「何にやりがいを感じたか」「どのような業務に興味があるか」「どのような環境で働きたいか」といった点を深掘りします。Webデザイナーとして、どのようなデザイン領域に関心があるのか、どのような技術を習得したいのか、チームでの協業を重視するのか、裁量権を求めるのか、といった具体的な要素を洗い出すことで、企業選びの「軸」が見えてきます。
キャリアの棚卸しでは、これまでに担当したプロジェクト、習得したスキル(技術スキル、コミュニケーションスキルなど)、達成した成果などを具体的に整理します。これにより、自身の強みや、企業に提供できる価値が明確になり、自信を持って企業を探すことに繋がります。
具体的な企業選びのステップと視点
自己分析で洗い出した自身の軸に基づき、具体的な企業を探し始めます。
1. 情報収集の開始
求人サイト、企業の採用ページ、企業コーポレートサイト、各種SNS、転職エージェント、業界ニュースサイトなど、様々なチャネルを活用して情報収集を行います。この段階では、幅広い情報を集めつつ、自身の軸に合う企業や興味を引かれる企業をリストアップしていきます。
2. Webデザイナーが見るべき企業情報
求人情報や企業サイトを見る際、Webデザイナーの視点から特に注目すべきポイントがいくつかあります。
- 事業内容とサービス: どのようなサービスを展開している企業なのか、そのデザインに共感できるか。
- デザインへの投資度: 採用情報にデザイナー職が多く掲載されているか、デザインチームの構成はどのようになっているか。
- 開発・デザイン体制: エンジニアとの連携はどのようになっているか、デザインレビューのフローはあるか。
- 使用技術・ツール: 現在の自身のスキルとマッチするか、または習得したい技術が使用されているか(Figma, Sketch, Adobe XD, Photoshop, Illustratorといったデザインツールに加え、GitHub, Slack, Asanaなどの連携ツールも確認)。
- ポートフォリオの扱い: 選考においてポートフォリオがどのように評価されるか、過去の実績公開に関する考え方など。
- デザインガイドラインや思想: 企業のプロダクトやサービスの統一感、デザインに対する考え方。
これらの情報は、企業の採用ページに記載されていることもありますが、ブログ記事や会社説明資料、働く社員へのインタビュー記事などを参照することも有効です。
3. 企業研究を深める
興味を持った企業については、さらに踏み込んだ企業研究を行います。
- 企業の文化・風土: 社員インタビュー記事、SNSでの発信内容、口コミサイトなどを参考に、企業の雰囲気や働く環境をイメージします。
- 事業の成長性・将来性: 企業のIR情報やプレスリリース、業界全体の動向などを通じて、企業の安定性や今後の展望を把握します。
- ミッション・ビジョン・バリューへの共感: 企業の掲げる理念に共感できるかは、長期的に働く上で重要な要素です。
企業研究は、単に情報を集めるだけでなく、「自分はここでどのように貢献できるか」「ここで働くことでどのような経験が得られるか」といった視点を持って臨むことで、より深く企業を理解することに繋がります。
選考プロセスを通じた企業の見極め
応募書類の作成、面接といった選考プロセス自体も、企業を深く理解し、自身とのマッチ度を見極める貴重な機会です。
1. 応募書類作成時の視点
応募要項を熟読し、求められるスキルや経験が自身の持つものと合致するかを確認します。また、職務経歴書やポートフォリオを準備する過程で、「なぜこの企業に魅力を感じるのか」「入社後どのように貢献したいか」といった点を改めて言語化することで、自身の企業選びの軸がより明確になります。
2. 面接での見極め
面接は、企業の担当者と直接コミュニケーションを取り、企業の雰囲気を肌で感じる重要な機会です。
- 質問内容: 面接官からの質問内容を通じて、企業が候補者のどのような点に関心があるのか、どのような人材を求めているのかを把握します。
- 逆質問の活用: 事前に準備した質問を通じて、働く環境、チーム体制、キャリアアップの機会、企業文化など、自身が重視する点について具体的に質問します。面接官の回答内容や態度からも、多くの情報を得ることができます。
- オフィス見学: 可能であれば、オフィスの雰囲気や社員の方々の様子を見学することで、入社後のイメージを具体化できます。
3. 内定後の確認
内定を得た後も、改めて企業の情報や提示された条件を確認します。疑問点や不安な点があれば、遠慮なく採用担当者に確認し、解消することが大切です。複数の企業から内定を得た場合は、それぞれの企業を比較検討し、自身の軸に最も合う企業を選択します。
不安を乗り越えるためのマインドセット
企業選びの過程では、理想の企業が見つからなかったり、選考に落ちてしまったりと、様々な困難に直面する可能性があります。そのような時でも、不安に囚われすぎず、前向きに進むためのマインドセットを意識することが重要です。
- 完璧な企業は存在しない: 100%完璧な企業は存在しません。自身の譲れない条件と、ある程度妥協できる点を見極めることが大切です。
- 複数の選択肢を持つ: 一つの企業に固執せず、複数の企業に並行して応募することで、視野が広がり、比較検討する中で自身の本音が見えてくることもあります。
- 企業研究は自己成長の機会: 企業について調べることは、業界や市場を理解し、自身のキャリアについて深く考える良い機会でもあります。
- 不安は具体的な行動で解消: 不安を感じたら、企業研究をさらに深めたり、現職の同僚や知人に話を聞いてみたりと、具体的な行動を起こすことで、漠然とした不安が軽減されることがあります。
まとめ
初めての転職における企業選びは、多くの情報の中から自身に合う企業を見つけ出す、時間と労力のかかるプロセスです。しかし、このプロセスを通じて、自身のキャリアに対する理解を深め、どのような環境でどのように働きたいのかを明確にすることができます。
漠然とした不安に立ち止まるのではなく、まずは自己分析から始め、Webデザイナーとしての専門的な視点を持ちながら企業情報を収集・分析し、選考プロセスを通じて企業と自身とのマッチ度を見極めていくことが重要です。不安を力に変え、一歩ずつ着実に進めることで、納得のいく企業との出会いを実現できるでしょう。